8月19日、皇后杯県予選開幕。カテゴリ区分のないトーナメントは常に刺激的だ。今年度のエントリー数は昨年度までよりも少し減ってしまった。いくつかのチームが参加を見送る決断をしたのはそれぞれに事情があるのだろう。痛みを理解しつつ、それでも”その場に身を置く”ことの意義深さも同時に語りたい。各高校女子サッカー部に経験者がずいぶん所属するようになった。これは過去多くの高校が皇后杯にエントリーしてきたことと決して無関係ではない。出場することで高校女子サッカーが認知されるようになったのだ。必然的に県内高校全体としてレベルの底上げが起き、様々なステージで活動が活発化するきっかけになってきた。アンダー15のあと”県内でサッカーを続ける”選択肢を目に見える形で用意していく。高校チームの皇后杯参加はその材料になる、と私は思う。
アンガクの1回戦はセントラル豊橋。毎年好選手を輩出する実力派のクラブチーム。今年もU15選手権において東海出場権を得る結果を残している。対するアンガクは同日開催のミニ国体に主将ナツキを送り出していたため中盤の構成に変化を生み出してキックオフ。開始前半1分で先制できたことがその後の展開に大きな影響がでたのだと思う。前半6得点(ホノカ4、ミサト、ユイ)、後半3得点(タマ、ホノカ、ユイ)を挙げ9-0の勝利となった。ただ、前後半ともに何度か鋭いカウンターに苦しめられたり中学生とは思えない力強さに対し後手に回る場面があった。自分たちのプレーぶりを反省すると同時にセントラル豊橋の素晴らしさを素直に認めていきたいと思う。
部員に頑張れと発破をかける以上、私自身何かチャレンジをする必要があった。マンネリ感を打破したい気持ちが相当強かった。夏休み中の遠征行き先と回数。なんとか調整にこぎつけての関西チャレンジ。
今回の遠征はきっかけづくりからあらゆる面で追手門学院高の大橋先生、そして大御所である竹内先生(大商学園)の力を借りた。このお二人の助けがなければマッチメイクはもちろん、会場を抑えることも全く出来なかった。いまこうして振り返っていても感謝の念がどんどん湧き出してくる。”関西⇆関東”の途中下車に愛知を使ってもらう中で少しずつ関係性を作ることができたのかなといま思う。今回の遠征の入口をつくってくださり、試合をご一緒に出来ないにも関わらず常に配慮くださった大橋先生。会場手配と当日の臨機応変な対応に、同じ目線まで降りて来てくださる優しさを痛感した竹内先生。またこのお二人をきっかけにして多くの先生方指導者の皆さんともつながりを実感することができた。苦労を厭わず奮闘し続けることが恩返しになると確信している。
20日。初めて訪れたJ-green堺のスケールの大きさに感動。まずは四国エリアを代表する鳴門渦潮(徳島)のトップチームと対戦(35*2。前半0-2、後半0-6)。昨年度の石川県以来の再会に吉成先生と固い握手。必死で戦うもほとんど良いところが出せなかったところに悔いが残る。あとから竹内先生に聞いたのだが渦潮はアンガクとの対戦だけのためにトップを用意してくれたそうだ。本当に有難いし、結果的に不甲斐ない内容だったことが申し訳ない。意義深い試合に向かうための良い準備をさせられなかった私自身の力不足に腹が立つ。その後SECONDがクラベリーナ(30*2。前半0-3、後半2-0。得点はナツミ、ヒロナ)に挑み、渦潮戦の反省を踏まえたTOPが大阪国際大学B(30*2。前半1-0、後半1-0、得点はユイ2)と対戦。
2日目。大商学園AにはTOPメンバーで、おおつヴィクトリーズ(滋賀)にはSECONDメンバーでそれぞれチャレンジ。夕刻には大阪偕星とも組んでいただき、真夏日の大阪で終日ファイトし続けることができた(ちなみに大阪偕星を率いる先生は以前に追手門学院高校で大橋先生と共にスタッフだった方。強くなるのも当然だ)。
特筆すべきはやはり大商学園の質の高さである。皇后杯関西地区予選を目前に控えたTOPofTOPを相手にした前半は0-5、後半はその高みに割って入ろうとするメンバー相手に0-2。大商学園との対戦機会はこれまでも数回あったが、このレベルへの挑戦は初めてだった。ミスの少なさや豊富なアイデアに翻弄されたが、それは同時に私たちの弱みを次々と明るみにしてくれるレッスンでもあった。出し惜しみすることなく高いパフォーマンスを発揮し続ける大商学園を前にして、最後まで抵抗を試みた我がアンガク部員の姿も手前味噌ではあるが誇らしかった。その姿はまだまだ不十分ではあるものの前日の不甲斐なさから必死で脱却しようとする心がみえた。
ハードワークは当たり前であり、なおかつ対戦相手は常に高レベル。この日に限らず今回の遠征は心身ともに整えることに苦心した部員も多い。睡眠時間の十分な確保、栄養バランスを考え、なおかつリラックスして摂る食事(の量)などピッチの外がプレーにつながっていくと実感した部員も多いだろう。さらにピッチ上では真剣に取り組むがゆえ、どうしても激しい接触シーンが増える。おおつヴィクトリーズとのゲームでは伸び盛りのSECONDが好ゲームを展開する中、得点が欲しいタマミが相手選手と交錯し右足を負傷。TOPチームにも名を連ねるタマが全く起き上がれない。いつもと違う様子を察知した同じ学年の3年生が一気に駆け寄る姿は、常に誰よりも大きな声でチームを鼓舞するタマの存在意義が表れたシーンだったようにも思う。
22日は会場を服部緑地公園に変え、再び大商学園A(30*計3)と大商学園B(30*2)、そしてU15クラブチームであるRESC(大阪)と対戦(30*1)。
前日同様、タフな試合であった。この日の大阪府堺市、最高気温が39.7度を記録したことを知ったのは帰りのカンテラ号で。もしグランドで聞いてしまっていたらちょっと弱気になっていたかもしれない(笑)。
前夜のミーティングで解決を探った戦い方が功を奏したのだと思う。スコア的には前日と大差ない(30*2、前半0-2、後半0-2)が、内容は俄然良くなった。苦しい中でも要所を把握することでエネルギーの掛け方がクレバーになったように思う。必然、ピッチ内の会話も前向きなものが増えてきた。とはいえ、まだまだ失点を重ねてしまう弱さも露呈した。このレベルに対しても抗う力がないと全国では到底戦えない。ただ、僅かでも達成感を得られたからこそ、素直に自身の弱点を受け入れられるとも思う。謙虚に学ぶ姿勢をチームメイトが互いに確認し合うチャンスを得た最終日であった。
今回の遠征では個もチームも壁に当たったことが多かった。そのことを突きつけると誰しも最初はネガティブに受け止める。私からストレートに言われて悔し涙を流した部員もいる。
話した後に私自身考えた。口をついて出た「壁に当たる」とはいったいどういうことなのか。
部員たちは皆本当に頑張っている。無論、それぞれに能力の差はあるが、それぞれが成長を目指しひたむきに取り組む。努力をし、自分なりの工夫をしている。仲間にアドバイスを求めることもある。つまり”前に進もう”としているのだ。
壁が勝手に自分に向かってくることは無い。自ら前に進んでいるからこそ、壁に当たるのだ。
帰りは気分転換に道頓堀散策。珍しく自由時間を長めにリクエストして来たところをみると、どうやら相当楽しめたようだ。足を痛めた部員をおんぶして歩き回る姿は微笑ましくもあり、頼もしくもあり。食べ歩き途中に撮った写真には異なる学年が一緒に笑顔で写っていた。こういう、ちょっとした時間が部員同士の距離を近くする。
愛知に戻り、すぐさま2連戦。
24日は高校リーグでカピタニオと。台風20号の影響を見越して口論義運動公園を手配してくれた多田先生に心から感謝。さすが愛知の覇者。状況判断と決断力が最高である笑。試合は前半0-2、後半0-3で0-5の敗戦を喫す。しかしながらハーフタイムの指摘をすぐさま改善の材料にした後半の方が出来は良かった。惜しむべきは失点だが今後の対戦に生かすことが出来ればそれでいい。リーグ戦の意義を強く感じた一戦。その後にはSECONDがTRMを30*1。ヨッシーのFKとヒロナの嗅覚で1-1の同点に持ち込んだ。
25日はStudentLiga東海北信越の第3節として、インカレ常連の静岡産業大学と初対戦。前半0-3、後半1-2の計1-5で敗戦(得点はリナ)。スコア的にはもう少し近づけることが可能だったか…。レベルの高いマッチアップばかりだったが、悪くない局面も多々あり。もっとよく戦うためのヒントは”判断を助けるルックアップ”と”動きのダイナミズム”にある。出来たことを振り返るだけでなく、改善が必要なことを掘り下げなければ。
追伸。とにかくプレーの質が見事な静岡産業大だったが、試合後には数人の学生さんと軽く雑談。私たちを前に全く偉そうにすることなく、部員の皆さんが爽やかな挨拶をしてくれたことが私としては本当に嬉しく感じた。何というか…未熟な弱者に対し尊厳を認めてくれているというか。そしてそんな中、ある部員さんが「実は私、高校時代に安城学園、知っているんです」とのこと。驚いて聞いてみるとあの村田女子出身という。「高校の時に対戦した時もいいチームだなーって思ってましたよ!」と。あぁ、泣きそうだ、嬉しすぎる。矢代先生にも伝えたい。
本当は26日に三壁さん率いる名古屋経済大ともマッチメークしてもらっていたのだが…私から勝手なことを申し上げて、次回に持ち越しとさせていただいた。M壁さんほんとうにごめんなさい。チームとしての体力を考えるとここは一息つかなくては、と急遽判断、束の間の休息。
残す夏の動きは学校見学会(=練習会)、高校リーグ、そして皇后杯2回戦。
さあ、もう一息。壁にブチ当れ!突き破れ!