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顧問の独り言 2016年11月号

『全国まで、あとふたつ。』ー 全日本高校女子サッカー選手権 東海地区予選一回戦 ー

11月6日。静岡県磐田市ゆめりあサッカー場。3年前までは全国大会の会場だった。そういった意味では高校女子サッカーの聖地と言ってもいい場所。完璧に手入れされた天然芝、サッカーボールをかたどった花壇、何百の名勝負を見続けた観客席。創部以来、最高のステージ。

会場に到着したのは対戦相手の三重高校とほぼ同時刻。ほどなくして田中先生と遭遇。開口一番「いや〜、中野先生のハグだけは気をつけようってね〜対策してるよ〜」と饒舌。…まるで変態扱いである。どう考えても誰かのブログのせいだ。しかし私も別に誰彼構わずハグするわけではない。大切なのは状況判断である(笑)。そんなやりとりを見ている滋賀のルネス学園諸岡校長は笑顔で「今日は両方とも応援していますよ〜」。…早いとこ、住民票を愛知県に移してもらおう。

県決勝の翌週末、つまり東海地区予選1週間前にリハーサルを実施した。前日移動、宿舎での時間の過ごし方、ウォーミングアップの環境適応、そしてメンタルコントロール。北信越地区第3代表として全国大会出場を叶えた高岡商業高校(富山)との1戦は、試合内容と結果だけでなく、その前後の様々な出来事も含めて非常に有意義だった。この経験がなければ、もしかするともう少し落ち着かない試合前の時間になっていたかもしれない。

マッチコーディネーションミーティングのあと、いつもと同じように部員だけでじっくり準備を始める。マネージャーを中心にした、落ち着き払った素晴らしいルーティン。私の眼前ではカピタニオがゴールを積み上げ続けている。ちょうど私の前にいたカピ保護者数人がアンガクのズンバに気がついたのか、合わせて肩甲骨を回す(笑)。
1:00定刻、キックオフ。

それにしてもあれだけ全力で応援してくれるなんて、正直思ってもみなかった。多田先生は「そりゃ、今までずっとカピの応援に来てくれてたワケだからね、恩返しさせてもらうよ!」とサラッと言うが、ピッチの中からあのド迫力の応援を目にし耳にすると…感動してちょっと泣きそうになった(泣いてはいない)。本当に〝選手の背中を押す〟応援ってあるんだなぁと心から感じた。失点で一緒に天を仰ぎ、ゴールを決めて共に盛り上がる。ピンチをしのぐと励ましは一層大きく強くなり、積極的な良いプレーを見せると歓声と拍手でさらに気持ちを高めてくれた。もう、本当の仲間のような…歌詞もカピタ定番の曲に〝アンガク〟とか〝アンジョー〟とか入れてくれて…ヤバい、書きながら今も泣きそうである(いや、泣いてはいない)。いつもの耳慣れた〝カピタによるカピタのための応援〟もすごいがそれを超えるほどに迫力があった。愛があった。
きっと他県には無い、愛知の温かさと懐の大きさ。全てをリードするのはやっぱり多田先生。海よりも深く感謝。

オープニングから素晴らしい戦いぶりを表現出来た。特に中盤が非常に高いレベルで機能。県決勝、前週のリハーサルからさらに成長を見せてくれた。球際の激しさとマッチアップの間合いが良かった。ただ、あまりにもハードワークしたせいか15分を過ぎた頃に一度ペースが落ちる。持ち前のダイナミックな攻撃を展開し始める三重高校。ウチがやるべきことをやらせてしまった。アウトサイドで苦労するシーンが増える。前半21分。三重、最初のCK。体を当て切るのがほんの少し遅れた。警戒していたセットプレーで失点。0-1。しかしこの試合、この後もCKは与えてしまったがセットプレーでの失点はこれだけ。ゲーム中に反省を生かせたことは、試合の中での成長を意味する。が、前半25分にも追加点献上。0-2。勢いづく三重ベンチ。
無論、アンガクも攻撃の手がなかったわけではない。今大会で手に入れたプレッシングのグループ戦術はこの試合でも威力を発揮。幾つかの混乱を三重守備陣に引き起こし、例えば間接FKを得たのは偶発性に頼った結果ではない。今年のアンガクにおける〝意図的なプレッシング〟の真骨頂のシーンである。
前半40分を過ぎてアディショナルタイムは1分を表示。その時、それまでも何度か可能性を感じさせてきたFWシオリがナツキからスルーパスを受け中央を一気にドリブル突破。GKも抜き去り無人のゴールに蹴り込む。ゴール!歓喜のアンガクイレブン。そして歓喜の応援席!前半のうちに得点できたことで大きな可能性を感じてハーフタイムに入ることができた。

見事だったのはベンチメンバーがサポートする姿。スプリントの本数に比例して体力が奪われる天然芝のグランド。気力が充実している分、もっと走る力が欲しい…もがくメンバーに対して緊急のマッサージを施す。すると前半終了時に相当疲労感が顔に出ていた面々が戦える表情になってきた。チーム一丸を体感。そして試合は後半へ。

1点ビハインドだが本職ナナカをSBに配置することを決断。前半苦しめられたアウトサイドのてこ入れを図る。するとそれが功を奏し自陣後方での安定したポジショニングから前線へのスキップパスが増え、より早い展開が増加。受けたシオリの足元と連動したリカとハナの右サイドが相手陣地の深さを追求できるように。途中交代で入ったアイカも何とか力を発揮しようと保持者に対し顔を出す回数を増やす。攻守にプレーエリアが拡大してきた中央のナツキからハルカを経由する左サイドへの展開と攻防は激しさを増す。ハルカの運動量はこの試合に対する思いを体現するかのようだった。そして呼応するレオナの突破。スピードと積極性は前半からまったく落ちていない。左サイドへの展開はいつも次の得点を予感させた。
対する三重のダイナミズムは後半に入って一層強くなる。予測していた背後への展開はSBサユミとCBリオを大いに苦しめた。必死で対応するも背走が多くなり、どうしても後手後手に回る。しかしそれでも諦めないスプリントの連続。この2人が左サイドであれほど死に物狂いに戦ったことは周囲に勇気を与え続けた。
幾度の危機を事前に回避したのは間違いなくCBリノだ。眼前に飛び込むようなインターセプトを前後半通じて大いに発揮。中央でのクサビ展開を未遂のうちに何度も阻止できたのは正しい判断に裏付けされた勇猛果敢なチャレンジゆえである。
決して諦めないアンガクだったが、それでも守備陣が瞬間的に置いていかれるシーンがあった。三重高校中心選手のテクニカルなキープ力と〝らしい〟攻撃パターンを信じるチーム力は対戦相手にとって面倒極まりない。数秒とかからないロングカウンターの餌食に何度もなりかけた。ただ、失点必至の場面で見事なセービングを連発したのがGKナナミ。得点機と同じくらい大きな歓声を浴びる八面六臂の活躍だった。
まだ正確なデータは確認していないが決して見劣りする後半ではなかったように思う。互いのチームのストロングポイントが凝縮された、見応えあるオープンで攻守にアグレッシブなサッカー。アンガクには幾つかのアンラッキーがあったかもしれないが、そこに至ったプロセスを最大限評価すべきだ。あえて言うなら運不運を引き寄せる力が田中先生にあって中野には不足していたということだ。

後半34分、レオナが左サイドから狙い澄まして右足一閃。スピードも角度も申し分ない一撃で追加点。得点後の歓喜はベンチ前に。前半も後半も喜びの輪を作れたことは本当に良かった。目の前の試合だけでなく今後のアンガク女子サッカー部のエネルギーになる。希望になる。
80分の熱戦は2-5(前半1-2、後半1-3)でホイッスル。目一杯出し切り、最後の最後まで戦い抜いた。やりきった。初めての東海大会、ここで終焉。

観客席に挨拶に行く。声にならない声。アンガク保護者の温かい目。時間を共有し思いを共有し、背中を押し続けてくれたカピタ部員。多田先生梶野先生岩崎先生は紺色のアンガクタオルを頭上で振り続けてくれた。朝一から来てくれていたのは南山の梅さん。名経大のM壁さんも未熟なアンガクを見続けてくれる。全てが本当にありがたかった。私自身これまでのサッカー人生で最も応援された1日だったように思う。
部OG9期生の姿があった。ふたかな、きゃら、なっちゃん、ゆあ。ちょうど3年生(11期生)が入学した時に最上学年だった部員たちだ。頼りなかった11期生のここまでの成長は彼女たちにどんな姿で映っただろう。

チームの苦労を一身に背負ってくれた、背負わせてしまった11期生。その成長と変化はどのシーンを思い返してもたまらなく愛おしく思う。無論、思いは12期生と13期生も同じだ。ハルカ、シオリ、マイ、サユミ、ナナミ。そしてミサキ。本当によく頑張りました。
「ありがとうございました。」

帰りは少し道草。新居の浜に、初めてマイクロバスで突入(笑)。全てが名残惜しいスナップ写真の数々は大事にとっておこう。もしかしたら砂がエンジンに少し入ってラジオが故障?(ウソである)。ドライバーを寝かせないために歌い続ける部員に、また活力を貰った。

また、頑張ろうと思う。

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