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顧問の独り言 2013年11月号

再び、スクラップ&ビルド。

10月20日に椙山に敗れて終わった高校選手権。3年生がいない、あるいは東海に行けずに大会を終えてしまった寂寥感を感じつつ、必死で前を向く。本当の意味で新チームになり、これからどういう構築をしていくのか…毎日頭を悩ませるのは…でも、意外と楽しい。チームレベルや私の指向するチームモデル上、どうしても各選手が複数ポジションにトライするしかない。新たなステージに取り組むことで、サッカーの面白さ(=興味深さ)に触れるチャンスも増えると思う。食わず嫌いだっただけでもっと可能性が広がるかもしれない、とも思う。これまでの経験値を無駄にすることなく、更なる進化を遂げる…。前にも『独り言』したと思うのだが、いわゆる“スクラップ&ビルド”の発想である。一度組み上げたものを、そこで満足せず、勇気をもって解体する。同じパーツで別のモノを創り出す…。まるでブロックおもちゃのようだ。しかしそれとは少し違う。なぜなら一つずつのパーツが時間の経過、経験値の上昇とともに、ゆっくりと形を変えているのだ。なかにはひと回りもふた回りもスケールアップしていることもあるし、今までくっつかないと思われていた他のパーツとがっちり組み合うこともある。本人は大体の場合、そのことに気付いていない(あるいはネガティブな自己評価だけで終わらせている)。だから、そのことに気付かせる、正しい自己評価まで持っていくのも指導者として大事なことかもしれない。

こうして、いわば回り道のようなことをこの時期、毎年している。誤解の無いように書いておくが、ゼネラリストを沢山創り出し、スペシャリストを無くしていこう、ということとは全く違う。足がとてつもなく速い…とか、この角度からのフィニッシュは比類ない…とか、アプローチの予測能力が周囲を圧倒する…とか、すでに持っている武器(=勝負できる能力)があれば、そこに“磨きをかける”のは当然である。「スペシャリストがいれば局面を優位に運ぶことが出来る」。これはサッカーというスポーツの常である。ここで言いたい個の更なる進化とは“新しい武器を持つ”こと、“自分(たち)の能力の使い方を模索する”ことにある。個に応じて、チームに応じて、やれることは意外なほどにたくさんあるのだ。

11月16日、17日。高校選手権東海地区予選。
集まるのは愛知3校、静岡3校、三重1校、岐阜1校の計8校。ここから4校が1月の高校選手権全国大会(静岡県磐田市)の出場権を得る。
愛知開催ということもあり、会場の豊田市陸上運動公園には多くの高校女子サッカー部員と顧問団が集結した。総責任者の南山梅垣先生の緻密かつ的確な指示のもと、2会場を可能な限り円滑に運営する。振り返ればJFA担当者や報道含めた事前打ち合わせから始まったこの両日、それぞれに苦労はあったが担当県として良い対応が出来たのではないだろうか、と自負している。駐車場対応、会場準備、受付業務、ボールパーソン、試合記録、場内放送、担架要員、ゴミ拾い、などなど…。どの高校の部員も指示に従い迅速に動く。本当に素直で前向きな高校生の姿を大勢の観客にもお見せすることが出来たのではないだろうか。決勝が終わって役員室に行くと…ひさしぶりに全員がグッタリ、であった(笑)。しかしそんな中、全国の切符を獲った2校の先生がやってくると…万雷の拍手。東海大会史上初めてとなる、愛知県から2校という出来事に疲れも吹っ飛ぶ瞬間だった。

私は陸上競技場担当だったこともあり、16日のカピタニオvs桐陽(静岡)、常葉橘(静岡)vs三重。17日はカピタニオvs常葉橘、そして3決となったカピタニオvs椙山を観ることが出来た。カピタと桐陽のせめぎ合い、三重の素晴らしいチャレンジ、県決勝と同じカードの3決、など見どころの尽きない二日間だった。そんな中、チームとして最大の学びになったのはカピタvs橘の一戦。アンガク部員を3~4人のグループに分け、それぞれの視点、それぞれのテーマ設定で分析もした。試合展開の詳細は他に譲るが、前日に全国出場をすでに勝ち得た2校の、チームとしての総合力の高さに舌を巻いた。主力の一部を大学受験で欠いたカピタは多田先生お得意の“選手起用の妙”で時間帯によっては互角以上のバランスを見い出す。対する橘も前日はスタメンでなかった選手をアタマから配置することで、きっと選手のモチベーションをコントロールしているのだろう。互いに個の力と局面ごとのグループ戦術が素晴らしく…気がつくと、女子サッカーの魅力を再認識した自分がいた。

束の間のピッチを利用して、県内各高校から推薦された選手で交流戦を行った。いわば“次の大会こそは…”と虎視眈々と狙っているチームの有力選手ばかりである。ウォーミングアップをゴール裏で始めただけで、観客席からの熱い視線を背中に感じる。選手諸君も緊張が少しずつ解けてわずかながら笑顔でコミュニケーション。こういう時にかける声は絶対にフリーズコーチングよりシンクロコーチングに限る!…なんてことを考えながら徐々に楽しく条件付けを変化させながらボール回し、などなど。観客席にいた高校生たちもなぜだかゴール裏に近いところに陣取って、ウォーミングアップを見学している様相。おぉっ!みんな見られてるぞ!もう、これだけでテンション1ランクアップである(笑)。そして間もなくピッチへ。率いるは至学館高校の“若大将”永井先生、そしてワタクシメ。つまり『アンタたち、ヒマなんだからちょっと仕事してきなさい』的なノリである。ひどい県である。

30分3本程度の時間であったが、それぞれが個性感じる魅力的なプレーを展開。時間の経過とともにプレーの質も上がり、いたるところで興味深いマッチアップも繰り広げられた。ちなみにわがアンガクからはあゆみ、ちはる、GKあだま。そしてケガのふたかなが代表入りを断ったため(!)追加でゆきよを招集。人数の多さは若干、顧問のごり押しである(笑)。集合写真は高体連女子サッカー公式サイトのトップをcheck!

さて、今年もとうとうあと一か月。毎日のトレーニング、寒くてもがんばるぞっ!

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