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顧問の独り言 2012年10月号

予選リーグ。

10月6日、第2戦。対菊里高校。2部所属ながらまったく侮れない。諦めないメンタリティーを武器に、対戦するたび苦しめられる好チーム。常に前向きな表情で取り組む姿勢は福留先生の温かい寄り添いが生んだチームカラーであることは間違いない。前回の対戦は昨年冬の練習試合(そう考えると珍しく久しぶり)。その時は押し気味に進めながらもワンチャンスを決められ思わぬ敗戦を喫している。これは気を引き締めてかからねば。
心配をよそにキックオフから相手ゴールに迫り続ける安城学園。攻撃的に前半を戦い、主導権を完全に掌握。しかしもう一歩のところで菊里守備陣の粘り強さも手伝って得点に至らず、前半終えて0-0。決して悪くない内容だけにフィニッシュの部分に期待がかかる。アグレッシブなサッカーをもう一度展開しようと確認し、後半へ。
試合が動いたのは後半19分。せりのコーナーキックに相手マークを外したあゆみがダイレクトに合わせ待望の先制ゴール。溜飲を下げた。しかしこのあとは決して1得点で満足したわけではないのだが大した見せ場は作れず、そのまま試合終了。1-0。内容的には前節の市邨戦より少し改善されてきたが、チームの力を出し切れていない。そういう意味ではまだストレスが残る結果となった。

10月8日。第3戦。対聖カピタニオ女子高校。それにしても今の3年生にとっては入学以来、何度目の対戦だろう。公式戦…特に予選リーグで絶対王者とここまでの対戦回数(1年次、新人戦。2年次、総体と高校選手権。県選手権では勝ち上がっての対戦。3年次、総体と今回の高校選手権。なんと9分の5の確率!)があるのは恐らく安城学園だけ、である(おかげで最近では抽選のたびにクジを引かなくても“どうせカピタと一緒のリーグでしょ(笑)”などと言われる始末である)。前回の対戦では内容的にはまだまだだったとはいえスコアとしては1-2という最少失点差での敗戦だった。だからこそ今回の対戦はチーム全体が“自分たちの今の力を本気で試す”という意味でチャレンジ精神に溢れていた。
前半スタートから積極的。小気味よいテンポでボールを動かす相手に対し、中盤でのチェックが効果をみせる。狙い通りのインターセプトからショートカウンターで相手ゴールに迫るシーンもあり、これまでの対戦の中で最も攻撃的なサッカーを体現。しかし自陣ゴール前でことごとく決定機に決められ前半3失点後半4失点。とはいえ自分たちの力を出し切るというテーマに対してはそれなりの充足感を得られたようで、試合後の部ノートには大きな悔しさをにじませながらも「今までで一番攻撃することが出来た」「弱気にならないでパスをつなげようと意識してすごく良かった」「強い気持ちで戦うだけでカピタ相手なのに試合をしててすごく楽しかった」とのコメントも。もう一度、カピタと対戦するには決勝トーナメントに進出し、決勝まで勝ち進まなければいけない。弱小チームが少しずつ力を付けたのは常に目前にカピタという高い壁があったから。もう一度、その壁に立ち向かいたい。その前にいくつもの戦いが用意されている。次節は、南山+愛知啓成合同チーム。

10月14日。第4戦。対南山+愛知啓成。過去、合同チームの面白さを県内で一番味わったのはたぶん私と“宇宙一熱い男”梅垣先生ではないだろうか。だからこそ、油断大敵なのは百も承知である。
前半キックオフ。梅垣南山の代名詞である“超コンパクト”なサッカーに少々てこずるもサイドから2列目が飛び出す展開を何度も繰り返す。その結果、必然的にCKの機会が増えてきた。3本目のチャンスにきわがダイナミックに頭で合わせて先制。後半には中盤の混戦からスルスルッと抜け出したゆめが、ゴールまで30mほどの距離から狙い澄ましたループを無人のゴールへ。25分に南山のもう一つの顔“超テクニカル”なドリブルにあっさり中央突破を許し1点を献上するも、終了間際にはせりがタメをつくりスルーパス。オフサイドを警戒して2列目からドンピシャのタイミングで飛び出したのがはるな。相手GKもかわし最後はインサイドでコロコロシュート。決定的な3点目を奪った。3-1。南山の頑張りやアンガク自身の決定力不足も手伝い、多くのゴールを奪うことは出来なかったが、3得点ともこの一週間で取り組んだトレーニングが思い出せるようなシーンだったことに、『準備と結果』が伴うことの喜びを感じた試合であった。また、この試合から3年生部員にとっては“負けたら引退”という試合になる。そういう緊張もある中でトレーニングで取り組んだテーマを見事に表現できたことは、スコア以上に価値あるものだった。
これで勝ち点10。予選Dリーグをカピタに次いで2位突破。昨年度8月開催だった高校選手権以来、2大会ぶりの決勝トーナメント進出。県ベスト4入りを賭けて戦うは“もう一つの高い壁”旭丘高校。今までお世話になってきた中西先生に、勝って恩返しをしたい…。

10月21日。決勝トーナメント準々決勝第4試合。安城学園(D2位)対旭丘(B1位)。試合開始直前、3年生部員が入部から2年半かけてやってきたことすべては“この試合に勝つ”ためだったと話した。聞き入る表情を見れば多くを語る必要がないこともすぐに伝わる。時間にして2分か3分程度。このくらいでちょうどいい。心を通わせて試合に挑む。FWワントップに安奈、MFは中央の三角形に世梨、奈美稀、結女。両サイドは右に美雪、左に千陽。最終ラインは中央に槙子と季和で盤石、サイドは歩美と香織でポゼッションのカギを握る。そしてGKは“神降臨”麻衣という配置。安城学園史上、最強メンバー。
『心技体は足し算ではなく掛け算で考えなさい。どれか一つが欠けていると…つまり戦うモチベーションやチームに対する献身性が無かったり、技術が圧倒的に不足していたり、けがや体調不良などコンディショニングに失敗していて…つまり何かがゼロだと、はじき出される答えはゼロになる。それではチームのための良いパフォーマンスは絶対的に期待できない。むしろ周囲の足を引っ張るだけだ。でも心技体全てが充実していれば…とてつもない力を発揮できる。』

以前、部員にこう話したコメントを、試合を見ながら何故か思い出した。キックオフから攻め入る安城学園。ボールの支配率も相手を上回る。どうやら心技体のバランスがいいようだ。予選リーグで痛めた左足が再発しないか心配だった美雪も、この日のために受験勉強から呼び戻した香織も、充実のプレー。ポストプレーで安奈が役割をきっちり果たし、世梨と奈美稀と結女は攻守にめまぐるしく入れ替わる。旭丘相手にここまで出来るのか、と思わせるプレーの連続。それでも旭丘の気の利いた、かつ非常にスピーディーなショートカウンターでゴールを脅かされる。しかしもうDFラインにに心配はいらない。予選リーグから必要な修正をした季和と槙子のコンビは盤石だった。歩美の積極性もここ数試合で一番いい。千陽も何とかチームの力になりたいと気力のプレーを続ける。前半最も沸いた場面では世梨のミドルはバーを叩き、旭丘FWの突破から浴びたシュートはポストに救われた。仲良く、一本ずつゴールに嫌われ、0-0。前半はスコアレスドロー。内容的にはベストパフォーマンス。あとはゴールが決まるのを待つだけ。
後半開始直後、ゴール前で処理を一瞬躊躇したこぼれ球に素早い寄せから迷わず蹴り込まれ、あっという間の失点。しかし、ハーフタイムに“先に失点しても先に得点しても、そんなことはどうでもいい。大事なのは終了時に1点差以上で勝っていることだ”と話したことが少しは頭に残っていたのか、これからだ!という表情。しかしその後、前半ほどではないものの、変わらず安城学園の時間は来るのだが…流れが来てもなかなかゴールを奪えない。ベンチが焦りを感じ始めると同時に、少しずつ足が止まり始める。止まる、というほどではないにせよ、ほんの少しずつではあるが動き出しのテンポが遅れ始めた。まずい…と思った後半28分、美雪が右サイドを執拗に攻め、CKを獲得。何が何でもこのシーンで決めなければ、という展開。キッカーは世梨。中の動きはトレーニング通り。そして…季和のヘディングからこぼれに反応した結女が…文字通り押し込んで…起死回生の同点ゴール!何とか1-1に持ち込んだところで、前後半が終了。10分-10分の延長に突入。
そのあとの戦いは、“死闘”といっても大げさではないと思う。攻撃の手が打てなくなった延長前半、途中投入の春奈が起爆剤となり、左サイドで再三の好機を演出。しかし旭丘も粘り強いチェックで決定機とまではいかせてもらえない。布陣を変えスーパーサブの加奈も投入。だがここまで白熱したゲームに途中出場するのは本当に難しい。そこには技術だけではなく…何か、“場を変える特別な力”が無ければならないのかも知れない。危機もあった。スルスルっと抜け出した相手FWに付いていけない。GK麻衣が1対1に。万事休す…と思った次の瞬間。ナイスセーブ、そしてはじくことなくボールは腕の中へ。本部席も思わず拍手するビッグセーブ。とにかく全員で試合をつくり続けた。しかしアクシデント。前半終了と同時に香織と奈美稀が足を負傷。前日練習で麻衣がそばに寄ってきて「先生、一応柚香もポゼッション練習、やらせときましょうか?」といってきたのを思い出した。気が利くゴールキーパーがいて良かった。急遽、SBに柚香投入。しかし奈美稀はどうしても替えが効かない。この試合、今まで見せたことがないくらいの気迫で数々のマッチアップを続けてきて…とうとう足が悲鳴を上げてしまった。延長後半がスタートするも応急処置を続けるベンチ。ピッチでは替わった右サイドで柚香が初めて見せるスライディングで突破をストップ。世梨も中盤の底に戻り、全員で必死に守り切ろうとする安城学園。しかし…一瞬寄せが遅れてしまった。延長後半5分、マークに行くも振り切られ隙を見せてしまった。とはいえ、今思えばあの時間帯で、あれだけのプレーをする旭丘攻撃陣の中心選手を褒めるべきかもしれない。無理強いをし、奈美稀を再びピッチへ。そして、最後まで全員であきらめず戦い抜いたあと…タイムアップ。1-1、延長0-1。
3年生の高校サッカー生活が、終わった。とうとう、終わってしまった。本当にいい試合だった。もしかすると3年生の3年間でベストゲームと言っていいかもしれない。最後にそんな試合が出来て、部員は幸せだったかもしれない。常々“どれだけいい試合をやっても…勝負には勝者と敗者が存在するのだから、どちらになるかはわからないよ…それを受け止める心の強さを手に入れなさいよ…”とも言ってきた。しかし…悔しいものは悔しい。自分の心に正直に向き合うと、いつもの敗戦と同じように自責の念に駆られる。東海大会に行きたいと皆が言い、東海大会を目指すと公言してもいいレベルにまで成長したチーム。だが…叶わなかった。
試合後、尊敬する中西先生から「安城学園、本当に強くなったなぁ…いいチームを作ったなぁ…」と言っていただいた。普段お世辞を言う人ではないので、その言葉は真正面から馬鹿正直にいただこうと思う。とはいえこの3年生たちも最初から力のあったチームなどではない。1年次から試合にどんどん出場していたものの、全くといっていいほど勝てなかった。むしろ“足元の技術がそこそこあっても勝てない”“上手くいかないと他人のせいにする”ダメなチームの典型でしかなかった。しかし、2年になり、3年になり、練習試合や遠征など多くの経験を経て、自分たちを見つめ、ゆっくりと、しかし着実に強さを身につけてきた。そして互いを信じ認め合うチームの絆を築き上げてきたように思う。

「世梨、奈美稀、麻衣、美雪、香織、季和、槙子、安奈、萌依。
良く頑張りましたね。紛れもなく“安城学園史上、最強。”でした。先生もとても楽しい3年間をみんなと過ごせました。ありがとう。
10月24日の『さよならミーティング』で、3年生からたくさんのメッセージをもらい、翌日の新チームTRは熱いものになりました。1,2年生はくたくたになりながら、でもどうやら先輩に追いつこうと必死な気持ちのようです。たまには、そんな後輩たちを見に、グランドに来てください。
またグランドで会いましょう!楽しみにしています!」by中野先生

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