ここ数年、新たなチャレンジをし続けている8月。昨年の滋賀、一昨年の岡山と、これまではどちらかというと西でお世話になってきたアンガク女子サッカー部だが、今年はとうとう東へ。神奈川、東京、千葉、茨城の各所で多くの方に世話になり、多くを学ばせていただいた。題して『関東チャレンジ遠征』。8月8日から12日までの4泊5日という時間もまた、私たちにとっては大きなチャレンジだった。
ここから先、この遠征についていろいろと振り返っていくためにもまずは多くの力を与えてくださった皆さんに感謝したい。自身の経験を踏まえて関東遠征のヒントをたくさんくれた南山の梅垣先生。叶いはしなかったものの関東の強豪大学とのマッチメークや宿舎探しなど幾つも問い合わせをしてくださった本校バスケ部顧問の金子先生。面識もない私からの唐突な問い合わせにも人柄を表すように柔軟な対応をしてくださった神奈川・相模女子の水木先生。そして…準備段階の相談からすべてを受け止めてくださり、ゲームでもトレーニングでも全てガチンコで勝負してくださった、およそ5年ぶりにお会いした“村田魂”村田女子の矢代先生。…こう書いている間にも改めて思うのが『すべてが勉強だった』ということ。安城に戻り、およそ一か月近く経った今でも鮮明に残る経験を、少しずつ紐解いてみたい。
早朝に安城を出発し、まず向かったのが神奈川県の海老名高校。一見、安城にも似た風景の中に活気に満ちた校舎を見つける。どうやら文化祭準備の真っ最中らしい。グランドにいらっしゃった校長先生にもご挨拶させていただき、いざ関東チャレンジの幕開けである。神奈川で対戦させていただいたのは海老名、厚木東、相模女子の3校。少女年代などのクラブチーム数はともかく、高校チームの数や全体のパワーバランス等をうかがうと愛知県のそれと結構似ている様子。顧問先生方とも多くのお話をさせていただき、試合共々多くの情報交流も出来てこれまた有意義であった。試合内容でもっとも印象に残るのは二日目の海老名高校戦。前半、決して悪いわけではないが決定的な違いを生み出せず、結果として試合の目的を見失ったかのようなスローな内容に“なぜ関東まで来たのか?”と問いただした。すると後半、見違えるような素晴らしいプレッシングを展開。力量あるチーム相手に全てが噛み合い、30分間圧倒し続けたことは戦術的なオプションを見付けるきっかけになった。
今回の遠征は『関東チャレンジ』と勝手に銘打って実施した。このチャレンジという言葉に部員それぞれがいろいろな意味合いを感じてくれれば良いと思うが、間違いなく言えるのは“部としてのチャレンジは精一杯出来た”ということ。“チャレンジすら出来ず負けてしまった”とか“途中でチャレンジするのを止めてしまった”ということは無かった。それが最大の収穫かもしれない。(正直言うとゲームの途中で心が折れかかった選手は何人もいた。しかし自分の力で立ち上がったり、あるいは仲間の助けを借りて再び戦った。だから最後までチャレンジし続けたといっていいと思う。)
またゲームだけでなく、ピッチの内外で全国レベルの強豪と関わり続け、多くの驚きと学びがあった。もしかすると部員よりも顧問の方が衝撃を受けた度合いは強いかもしれない。そう思うくらいの強烈な刺激を受けた。
先生方はどこまでも貪欲で、どこまでも理想を追求していた。誤解を恐れず書くが、関東に来なければここまでの経験は出来ない、と確信を持った。
東小岩で試合をし、波崎で試合をし、市川で試合をした。そして最後に無理を承知でセットプレーの指導を乞い、技術と心を学んだ。それら全てをどこまで自分たちのモノにし、大事な試合で表現できるか…。3年生にとって“区切りの大会”と位置付けた愛知県選手権は、もう目の前に迫っていた。
お盆オフを挟んですぐ、愛知県選手権の開幕。クラブチーム、大学、高校など全カテゴリーが覇を競う、正真正銘、県No.1を決する大会である。安城学園は昨年度に続き2回目の参加。
19日。一回戦、アオミレディースFC。育成に定評がある好チーム。試合はといえば前後半ともに開始数分で失点を喫し、前半はかな、後半はあゆみがそれぞれ終了数分前にゴールを決めて追いつくという、何ともハラハラドキドキな展開。ある意味楽しみだったPK戦に突入し、GKまいの“神降臨”的な活躍もあり、まずは一勝。
26日。二回戦、瀬戸フィオレンティーナ。カピタOGがチームの中心、県リーグ1部所属の格上チーム…とはいっても勝負できないわけではない。リラックスと集中をバランスよく整えてプレーしなさい、と送り出し、試合開始。すると中盤で意外にもスペースが与えられイメージに近いポゼッションが展開できる。つなぎと加速がなかなか良いバランスで展開出来始めた。とはいえ決定機は決めきれず、逆に前半10分に先制点を奪われ0-1で前半を終える。後半に入り、足が止まり始めた相手に一層攻撃を仕掛けるがそこは試合巧者の瀬戸。なかなかゴールを割ることが出来ない。そんな中、待望の同点ゴールは後半20分。試合前からミドルレンジからのフィニッシュを意識していたせりが見事に決め1-1に。その後も攻め続け、素晴らしいシュートもあったがGKの正面を突いたりポストに嫌われ、結局2試合連続のPK戦に。この日のPK戦の主役はキッカー5人。見事全員が予定通り決めきった。これでとうとう県ベスト8。準々決勝進出となった。
ここまでの2試合、改めて思うのは応援に来てくださる保護者、家族の皆さんの存在である。中には赤ん坊や愛犬まで(!)。そういった存在を見付けるたびに笑顔が広がり、温かい笑い声がチームをゆったりと囲んでくれる。
そして9月2日。準々決勝、至学館大学。
前半0-2、後半0-4。開始8分で2失点してから後半15分までよく堪えたが相手のフィニッシュがとにかく良すぎた。とは言え両サイドを含めた中盤での攻防は目を見張るものがあった。これまではルーズボールへの寄せが甘くなる傾向があったがこの日は違った。どのポジションの選手も大学生相手に一歩も引かず目の前のプレーに果敢にトライし続けた。トータル0-4になってからはとにかく一矢報いたいと考えシステム変更。リスクを冒しても前へ出ることを優先し、逆にそこを突かれてしまった。抜け目ない相手が素晴らしく、またリスクを背負わせてしまった指導者の未熟さを思う。それでも最後の最後まで戦い続けゴールを目指した安城学園。しかしそれは叶わなかった。
県ベスト4を目指したが8強で止まってしまった。負けは残念としか言いようがない。しかし良いプレーも、そしてミスも含めて今の安城学園の力を最後まで懸命に出した結果だとも思う。この悔しさをバネに、ここからどれだけ頑張れるか。
8月末日に高校選手権の組み合わせが決まった。
9月30日グループリーグ開幕。県決勝は11月3日。そこまで戦えるか。本当の勝負はそこにある。