『高校総体県予選。』
例年になく早い梅雨入り。そして緊急事態宣言の延長がすでに決まった5月を振り返る。
ゴールデンウィークの真っ只中、5月3日にFC刈谷アルフトゥーロとTM。会場は久しぶりの刈谷北高校。個々の能力も高くU15とはいえ刺激を受けることは常である。30分4本のゲームでは様々な組み合わせを試しつつ、クラブOGのユイもゴールを決めるなど、4月からの積み上げを幾つか表現できたかなと感じるゲーム内容だった。ゲーム後には小学生時代にわずかながら関わった子に挨拶される場面も。頑張ってるね、またプレーぶりを見せてねと話せたことも大変嬉しい出来事だった。
例年通り、連休のラスト二日間はオフ。結果的に実戦の少ないGWとなってしまったが、割り切ってトレーニングに精を出せたことはプラス材料でもあった。連休中は当然のように多目的グランドは取れない。手頃な狭さの安城学園第2グランドで要点を絞った取り組みに時間を割いた。
8日にラブリッジのスターチス&アスターとTM。江後さんからの電話で突如決まったこの日程は、結果的に吉と出た。なぜならその翌週に予定していたアスターとのゲームは緊急事態宣言により、数日後に実施不可が決まったのだ。
主力を数人欠いたとはいえ、随分とスターチスに翻弄されたゲーム内容。技量とプレースピードの差は時間の経過と共に、そのままスコアの差になってしまった。アスターとのゲームでは幾分か修正が効き、改善への兆しを表現できた。
練習試合禁止や定期試験期間を経て、総体県予選に突入。安城学園は5月23日、つまり準々決勝から参戦。対するは南山。常に良い準備をし、ハートある戦いぶりをするチーム。ポイントは慢心を許さないという、いわば自分達をコントロールする部分にあった。
前半26分にPA侵入からユウナが3人に囲まれるも狙い澄まして先制ゴール。先制点まで時間が掛かったのは南山の素晴らしさ所以。30分、CK。マコトが思い切って飛び込んだことが吉と出た。その背後にいたハナノがドンピシャのヘッドで追加点。35分にはユウナの突破からゴール前に嗅覚鋭く走り込んだアヤセがダイビング。鮮やかなゴールで前半3得点で折り返した。後半アタマに交代カード。得点を挙げたハナノとアヤセに代わってユイとガヤが入る。今シーズンは1年生同士のポジション争いが面白い。後半早々にはゴール前で保持したリオンからユイにラストパス。難なく追加点、と思いきやエンドラインを割ったとの判定。こういう場面があると流れが一気に変わるものだがそれに動じずやるべきことに取り組めたことがこの後半のポイントだったかもしれない。攻め続けながら4点目が入ったのは34分。右サイドをリオンが突破。良い角度のセンタリングに走り込んだのはユイ。交代出場で結果を出した。そしてアディショナルタイムの35+2分にはガヤが落としたボールをイヨがミドルをゴール右上に叩き込みゲームを締めた。5得点中4つを1年生が挙げるという素晴らしい内容。5-0で4強進出。
5月29日、準決勝の相手は同朋高校。選手層が厚くなり、いまや県のトップグループに位置する強豪。
この日の安城学園は、前日までの充実したトレーニング内容が嘘のように多くのバランスを欠いてしまった。私がこの試合にかける気持ちを強く押し出しすぎたせいだ。毎日精一杯サッカーに取り組んでいる集団とはいえまだ高校生。しかも数人を除くと昨シーズンまで公式戦の出番がほぼ皆無だったメンバー。更にいえばスタートの半数近くが1年生。結果、もっと出来るはずなのに、足も気持ちも止まってしまった。完全なるマネジメント・ミス。部員は、悪くない。
だが、それでも奮闘した部員のために事実を振り返らなければ。確かに前半は、書いた通りの不出来だった。必然、ハーフタイムにはポジティブなスイッチを入れるべく多くの言葉をかけた。部員たちはそんな状況でも言葉によく耳を傾けてくれた。おかげで後半に入ると徐々に攻撃の糸口、守備の改善がみられるようになった。明らかに前半よりも出足は良くなり、勢いも増した。球際の激しいバトルが増え、幾度か得点契機に近づいた。が、勝敗は覆せず。結果、前後半それぞれ1失点ずつ。計0-2で敗れてしまった。
必要なのは指針だった。
準決勝で敗れてすぐ一週間後に待つ3位決定戦。準決敗退の2チームはその時点で3位の表彰を受けるため、トーナメント的にはシード順決定戦という位置付けになる。無論、その試合に勝つことも大事だが、私の中ではそれ以上に、そのあとに続く全ての時間の方が重要だった。これからどうしたら自分達らしく戦えるか、どうやったら勝利の可能性を増やせるか、どう取り組めばアンガクサッカーがもっと魅力的になるか。
誤解を恐れずにいえば、私は三決が嫌いだ。心身ともに打ちひしがれているところに追い討ちをかけるようにもう1試合戦わなくてはいけない。場合によっては満身創痍だ。もし、その1試合で勝敗の結果だけでなく何も得ることができなければ、それは罰ゲームのようなものだとすら思う。
だからこそ、この一週間が大事だった。部員にも準決帰りのカンテラで話した。立ち直るのが一ヶ月後でいいとか三ヶ月後でいいとかそんなことは毛頭考えない。わずか、この一週間で必ず変える。この一週間の取り組みで変化を目指せないようなら半年後だって変化は起きない、と。
6月5日、テラスポ鶴舞。決勝のカードが終わって間もなくキックオフ。対するは愛知啓成。
結論から言うとトレーニングで強く意識した要素を、開始直後から見事に実践し続けた。それは得点がなかなか奪えなくとも、交代カードを何枚切っても、チャレンジが失敗したことはあったが試合終了まで意識が途切れなかった。この試合における最大の喜びがここにある。わずか一週間ながら1日ずつの積み上げをここまで意識してゲームに挑めたことも久しぶりだったかもしれない。
前半、終始押し気味に進めるもスコアレス。後半12分、この日FWでスタメン出場のユイがセンターライン近くでドリブルを仕掛ける。直後、ファールを受けてFK獲得。相手ゴールまで距離は50m以上。イヨのキックはゴール前の混戦を抜けた。落下点にいたのは主将リオン。らしくない丁寧なタッチでふわっと押し込み待望の先制。肘タッチでちょっとやりにくそうな歓喜の輪が広がった。直後、一ヶ月ぶりにやっと実戦復帰したにもかかわらず大活躍をみせたマナカを大事をとって下げる。今までのチーム作りならこの判断は正直なかなかできなかった。その後も浮き足立つことなく、終始〝こうありたい〟というプレーを全員がやり続けた。そしてホイッスル。先週とはまるで別のチーム。ポジティブな表情で今大会初の観客に挨拶に向かうことができた。
私たちの総体は終わった。しかしチームとしてのリスタートを切ることができたとも思っている。それは試合の結果だけではなく、ラストゲームに向かう一週間、部員が必死にトライし続けた証だと感じている。
6月に入り、梅雨空もますます増えそうだ。グランドが使える日も限られるかもしれない。
まずは今月、どこまで成長できるか。
まだまだ、強くなれる。