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顧問の独り言 2020年2月号

『野心こそ、力。』ー 新人戦 準々決勝、準決勝、決勝 

2月1日、準々決勝。対するは本田先生率いる同朋。要所に有力な選手を配置し常にアップセットを引き起こそうとするポテンシャルは脅威でしかない。
試合が始まるとアンガクが支配する展開。しかしながら、なかなか決定機を演出できなかった。とはいえそういう試合でもどうしたら得点の匂いがしてくるかと探る嗅覚を研ぎ澄ませるようになったのはチームの成長だと自負している。前半16分にリナのクロスに走り込んだリオンが決めきって先制。後半に入り46分には隙を見逃さなかったリオンが再び持ち味を発揮し追加点。51分にはペナルティエリアに押し込んだ状態からリナが左に展開しアズが難しいスペースを狙ってクロス。走り込んだ中の動きも好影響を生み、クロスがそのまま吸い込まれて3点目。守備陣も安定感を発揮しそのまま3-0でホイッスル。


2月8日、準決勝。豊川とのバトルを制した至学館との一戦。新チームになって持ち前の武器に一層の磨きをかけている永井先生は初のファイナリストを虎視淡々と狙っていた。
それにしても得点へのルートが大きく異なる2チームが戦って、ここまで試合が噛み合うことがあるのかというくらい、客観的にみると大変面白味のあるゲームだったと思う。互いに持ち味を存分に表現した好ゲームは前後半終えてスコアレス。ちなみに第1試合だった聖カピタニオvs愛知啓成も延長に突入したため準決勝の2試合ともにトータル90分の戦いになった。これはカピ多田先生曰く県初の出来事だそう。
この試合の肝は「落ち着き」だった。後半途中からベンチにしっかり届いてきたのは、後方からのコーチング。展開すべき方向のアドバイス、そしてフリーorマノンの状況把握というビルドアップに関する重要項目をGKくるみを含めて互いに声にし続けていた。それは決して常に大声というわけではなかったが、互いにしっかり届いていた。それに呼応するように中盤においてもボールの動かし方など極めてアンガクらしさを追い求めた。この姿勢は延長に入っても継続。まさに大会を通して一つの成長を見せてくれたということになる。
スコアが動いたのは88分、つまり延長後半の最終盤である。ここまで何度か訪れていた得点チャンスは至学館の強固な守備に阻まれていたが、ここに来てアズのキックとユイのヘッドがとうとうこじ開けた。1-0。だが、歓喜の輪が解けた後も最後までわからないゲームでもあった。得点後わずかな時間にシュートシーンを許すなど課題も残ったが、それも決勝に向けた宿題だと思い、また学べば良い。


2月15日、決勝。少し早めに到着すると入り口付近に椙山女学園と南山のメンバーが。アナウンスから本部運営まで多くの任務を請け負うためにこんなにも早くから集合してくれている。決勝に限った話では無いが、運営に関わる意義を顧問が説いているからに他ならない。一緒にイイものをつくりたいという思いを行動に移すエネルギーが県高校女子サッカーにはあるなぁと再認識。その後のリーグ表彰式を含めて、本当に多くの人が関わった、心ある1日であったこともここに書いておこう。

さて、誰かさんは数える気はないと言っていたのであえて数えてみると、カピタニオと大会最終盤(決勝or準決勝or決勝リーグ)で戦うのはこれで18回目。高校リーグや皇后杯を除いた数字だから対戦の実数は当然もっとある。ちなみに決勝で初めて対戦したのは2014年度の新人戦。それ以来、県ファイナルの舞台に立ち、近づけば近づくほどカピタニオという大きな山を常に体感してきた。というわけでカピタニオの凄さを一番知るのはアンガクである(異論反論は受け付けません)。そんなカピタも輝かしい実績を残した3年生軍団が全国での活躍を置き土産に引退し、主力の大半が代替わりした。とはいえ準決勝でタレント集団の啓成を破った力量はやはり相当なものであるし、その結果を導き出す多田先生の勝負勘には心から敬服するしかない(一言で言うと「まじリスペクト」)。

アンガクにとって、久しぶりの決勝の舞台、だからという理由だけでなくなかなか落ち着かない前半であった。前日までの雨天で天然芝がスリッピーで互いにミスが出やすい環境だったことは否めない。だが繋ぐところとセーフティーにいくところを読み間違えないところに決勝らしさがあったようにも思う。前半0-0、ハーフタイム。
前半の課題は中盤の対処にあった。ただ、全ての解答を用意しなくても要所のヒントさえ伝えればおのずと模範解答に近づくチームになってきたという自負もある。
後半、相手ゴールに近いポジションを少し配置換え。すると少しずつ得点の匂いがし始めた。が、カピタニオも手をこまねいているわけでは無い。当然のように互いのフィニッシュシーンが交互に訪れるようになってきた。だがこれまた互いに決壊せず。後半0-0、延長突入。


今大会、決勝トーナメントの一回戦途中でFWの柱であるホノカが負傷退場。続く全ての試合は出場回避を余儀なくされてしまった。選択肢の少ない新人戦の時期においてこれほどの痛手は無い。いくつかのプロセスを経て今の戦術にたどり着いたところで、最たるキーマンの離脱。一番悔しかったのはもちろん本人だし、それをグッと堪えて仲間を励まし続ける姿に呼応するかのように、自然発生的な〝ホノカのために頑張る〟という思いが見えない力になっていった。
戦術やシステムの変更も当然視野に入れたが、結論はノー。ここにきて新しい戦術的チャレンジをするのではなく、ここまで仕上げてきた戦い方に新しい血をどれだけフィットさせられるか、に焦点を絞った。その結果が決勝に至る過程での得点者に現れた。だから1年のマナカとリオンは今大会、過緊張の毎日を送った。時にはトレーニングでの不甲斐なさが私の逆鱗に触れたこともある。結果、その二人がこの試合を動かすことになる。


2試合続けての延長戦は、しかしポジティブな時間だったように思う。決めきれなかったシーンを嘆くより、決め続けようとした姿勢を評価するべきだ。それは守備陣にも当てはまる。場面ごとにダイナミズムとビルドアップを判断し続け、いつもより少しだけセーフティな判断を優先したことも含めて素晴らしい戦いを披露した。
延長後半2分。中央よりもわずかに相手陣地、サイドライン付近でFK。ユイのキックを捉えたのは”まさかの”マナカ。ドンピシャのヘッドは、しかし惜しくもバーを直撃。するとその真正面に”もってる”リオン。このシーンに至るまで何本もスプリントしたご褒美の如く跳ね返ってきた。愚直な二人が決勝点に関わるなんて、劇的すぎる。ベンチのホノカ目掛けて走る様は、まさにドーハの…じゃなくてジョホールバルのオカノであった(分かる人は中年以上である)。それにしてもこんなにかっこいい歓喜の輪は、あまり高校女子サッカーで観たことがない(中野調べ)。
さらにその5分後、すでに疲労困憊だったリオンの前にビッグチャンス到来。どうやらフラフラだったのは演技だった(のかもしれない)。一瞬のスピードで局面を打開し、2-0に。その後、交代してベンチ裏で「酸素が欲しい…笑」と呟きながらぶっ倒れていたのは教育的配慮として内緒である。


新人戦は幕を閉じた。初の単独優勝。計38得点は素晴らしいし、無失点での優勝もなかなかできることでは無い。少ない人数ながら、予選リーグを含めれば部員全員がピッチに立つことも出来た。決勝のスタンドには多くのご家族そしてOGが。なんと一期生の姿もあり、喜びをわかちあえた。
全員で勝ち取った戴冠は、しかし次なる挑戦へのスタートでもある。すでに練習は再開し、県トレセン組は年度最終の活動に参加。国体候補にエントリーされた部員もさらなる飛躍を狙う。新1年生の合流も目前だ。

もっと強くなろう。野心こそ力だ。

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