入学式から約3週間。安城学園高校として518名の新入生を迎えた。過緊張でどこか張りつめたような校舎の雰囲気が少しずつではあるが穏やかに溶け出し、廊下や教室で賑々しい個の存在を感じるようになってきた。そんな中、女子サッカー部には3月から意欲的に参加してきた6人に加え新たに5人が合流。3学年揃うと計26人という大所帯(?)となった。サッカー経験の有無はさておき、ひたむきで純粋で意欲的な新1年生の存在はチームに活気を呼び起こす。これで紅白戦が実施できる人数になり、なおかつマイクロバスの乗車定員内に見事収まった(笑)。これまで以上のすし詰めになるであろうマイクロバス車内…それを思うと何故だろう、自然に笑みとエネルギーが沸いてくる。創部10周年を迎える今年度。これまで同様、七転び八起きの一年間を、この仲間で経験していきたい。
部員に配布するスケジュール表には練習や試合の予定などを載せているが、私のパソコン画面上には各自の怪我の発生時期や診断された外傷名、リハビリ計画、通院履歴なども出来るだけ克明に記録している。さらに復帰時期のメドも本人と面談しながら、日程の上方修正も下方修正もしている。それにしても今月のいわゆる怪我人リストの多さは…ちょっと半端ない。3月や2月、あるいはそれ以前からの継続治療によって回復傾向にある部員の名前も含めると、その数は…おっと、放送コードに引っかかりそうなので書くのはやめておこう(笑)。とはいえリハビリ組の建設的な取り組みには正直、感心している。復帰までの目標カレンダーを作り、スポーツドクターのいる病院を探してトレーニング後にも精力的に通い、信頼のおけるトレーナーにリハビリ内容を逐一報告しアドバイスをもらう。毎日、アイシングをしたまま帰宅の途につく姿も見慣れてしまった(足首に氷のうをがっつり巻いた姿はガンダム的表現をするならどうみてもゲルググである)。ここまで誠実に怪我と立ち向かい回復のためなら労を惜しまない部員たち。手前味噌だがアンガク女子サッカー部の成長はこういう姿があるからだと確信している。
しかしそのおかげで(というと語弊があるが)今月の練習試合は先月同様、ずいぶんフレッシュな顔ぶれで実戦経験を積むことが出来た。その中で成長する姿を見ると心から嬉しく思い、そうかと思うとせっかくの機会なのに〝ただプレーするだけ〟で終始してしまうシーンもある。そういう場面を見ると、自分の指導力の無さに悔しさを感じるとともに、部員の日頃の生活態度に隙があるのではないかと勘繰ってしまう(そしてそれは残念ながら大体当たっている)。グランドには成長するきっかけがたくさん落ちている。それを毎日拾い続けるにはどうすればいいか。サッカーと、女子サッカー部と、そして自分自身に対し、まっすぐ向き合い誠実に正直に生活していく他にない。私はそう思う。
総体県予選の抽選終了、組合せ決定。大会では全てが順調に行かないのは百も承知。前回の新人戦が良い教訓である。気を引き締めて、あらゆる意味で挑戦し続けるしかない。そう言い聞かせ続けるものの、トレーニングでは…正直言ってここ数日、何か物足りなかった。何というか…、アンガクらしい一体感が伝わりにくいグランドの空気…。そしてその日、最後の話で一喝し、翌日の練習。そこでもまた不十分な取り組みがあった。「やりなさい」と言われたから「やってます」的な、アリバイ作りのようなトレーニング。私が最も毛嫌いすることである。当然いつも通り激しく指摘した。そして同日ラストはパート別の取り組み。メインはセットプレーであったが、それ以上に目を奪われたのは様々な理由で必死にもがく部員たちの姿。時間の許す限り…ある選手は苦手なキックに磨きをかけようと…ある選手は何本も何本も60mダッシュをやり続け…セットプレーもあと一本、あと一本と集中力を増す内容。久しぶりにグランドに充満した一体感。こういう空気が一気に生み出せる、目に見えない力があるのは本当に素晴らしい。ただ、大切なのはこれを次の日も、また次の日も継続することだと私は考えている。それがチームのベースアップには不可欠な要素なのだ。「今日もずいぶん疲れたけど、明日のトレーニングも楽しみだ」。こんな気持ちを皆で共有すれば…そうすればいつもの〝団結〟が必ず〝結束〟に昇華する。予選リーグ開幕まであと5日。楽しみで仕方がなくなってきた。