県総体を準決勝と三決での連敗で終え、少々凹み気味で迎えた7月。5日には今年度から参戦が始まった東海U-18プリンセスリーグの初戦として豊田レディースとの対戦があった。U-15東海トレセン組不在の豊田Lに対しても、新しいポジションや新システムは機能するに至らず、結果として実を結ぶには至らなかった。1-3で敗戦。月を跨いで、とうとう公式戦3連敗。正直言うとこの時にはネガティブな発想ばかりに陥った。ただ、救われたのは、それでも毎日ひたむきにサッカーに取り組む部員の姿であった。他の何物でもなく、ただ自分たち自身を信じて、もがきながらも前に進もうとする…。この姿勢を見るたびに『私も頑張らねば…』と思いを強くする。
駆け足で振り返ると…19日には高校リーグ1部第1節で南山と対戦。前半を終え1-1の試合は後半もそのまま進むかと思われたが、より攻撃的にシフトした残り10分から歩美→伽羅のホットラインとしおりの技ありで2ゴール。3-1という結果で久しぶりの公式戦勝利を味わう。続く第2節(24日)にはカピタニオとの重要な一戦。最近はくじ運が悪く(!?)、大会で対戦することも減っている(ま、アンガクがカピタと対戦する前に負けているだけ、という話もあるが)。これまでアンガクはカピタと対戦するたびに強くなってきた。そういう意味でも価値ある一戦、にしなくてはいけない。結果はかなり奮闘したが1-2の敗北。ただ、昨年度のリーグ戦では相当守備的な戦術を徹底した上でのスコアレスドローだったことを考えると、これもまたわずかばかりの成長と言って良いかもしれない。なお、試合後に多田先生と繰り広げたトークは試合以上に支配されてしまった。猛反省である。30日には第3節、対旭丘。先月の総体三決ではPKで苦汁を舐めたが、今回はしっかりと安城学園らしさを結果に結びつけることが出来た。スコアは4-0。高校リーグ戦において初めてベンチ入り全員が出場出来た記念すべき試合にもなった。
県高校リーグの合間を縫う形で今年も清水の地に向かった。J-STEPという最高の環境で他県の高校と競い合い、そして認め合う3日間。参加5回目の今大会、目標は2年前から変わらず掲げる〝全員出場〟と〝優勝〟である。
予選で同一リーグになったのは…唯一のクラブチーム参戦になる清水第八マイア(静岡)、そして通算2度目の対戦となる富士北稜(山梨)、初対戦の四日市南(三重)。決して褒められる内容ばかりではなかったが、それでも3試合を1-0、6-1、10-0でそれぞれ勝利し、全員がピッチに立つことが出来たのは今後の良い経験に繋がると思う。2年連続予選リーグ首位通過で上位トーナメントに進出。
得失点差により同一リーグだけでなく参加12チームで首位通過(これも2年連続)のため、上位トーナメントでは準決勝では2位通過の最上位と対戦となる。結果、予選リーグで最も苦労した清水第八マイアとの再戦となった。清水第八と言えば誰もが知る女子サッカー界の草分け的存在であり、このチームなくして現在の日本女子サッカーの興隆はあり得ない。そんなレジェンドとも言うべきチームの下部組織。しかしそこに存在する選手たちはそういった歴史に縛られ過ぎることなく、誰もが素晴らしくオープンマインドであり、ONとOFFの切り替えが非常に上手な集団であった。初日の対戦後には私との雑談に応じ、屈託ない笑顔を見せてくれた。個々の技術水準もベースがしっかりしており、西ヶ谷監督による日頃の指導の賜物だと痛感する。トップチームに合流している選手もいればU-15世代もいるということで幾つかの難しさはあるように見受けられたが、そういったことすら笑顔で爽やかに受け止めていく。そんなチームとの再戦に発奮しないわけにいかない。前半を互いにスコアレスで終えた後半開始早々4分、中盤での支配から美しいスルーパスにしおりが見事に反応。1-0。後半19分にはサイドを突破した伽羅がエリア侵入直後に足を振りぬく。若干のカーブを描いたボールはネットを揺さぶり追加点となった。これで落ち着くかな…と思った私がまだ未熟だったのかも知れない。終了5分前に鮮やかなミドルシュートを決められてしまった。GKあだまは相当悔しそうだったがあれは相手を褒めてもいいのではないだろうか。そしてタイムアップ。全く簡単ではない戦い。それでも随所にアンガクらしさを散りばめて、2-1で勝利を収めた。
2年連続のファイナル進出。とは言え対戦相手も異なれば、アンガク擁するトップチームのメンバーもずいぶん入れ替わっている。チームのDNA的にはリベンジマッチだが、あまりそこに意識が行き過ぎると良いことはない、というのが経験則にある。
対戦は東海大学付属翔洋高校。言わずと知れた静岡の名門である。特に男子サッカー部は数年ぶりの全国総体出場を果たすなど躍進著しい。女子も歴史ある高校部に加え、付属中学にも良い選手が集まりだした、とのこと。羨ましい限りではあるが、逆に言えば私たちにとってはこれ以上ないチャレンジとなる。清水L-CUPにおいても毎年必ずベスト4には顔を出す力量。今回はそれに加え数人がU-15世代であるとは言え県トレセン、東海トレセン、そしてなんとナショナルトレセン経験者がいるという。またそういった選手層だけでなく、指導者の皆さんを観ているだけでも大変勉強になることが多い。例えば前日の準決勝前W-UP。感情的高ぶりは全く見せず、重心移動とステップワークをテーマに据え、ボールを扱いながらも心拍数を一定値にまで上げる。そういったことをサラッとやってのける指導者と選手諸君。
決勝キックオフ。名門のタイガージャージに対し、アンガクのオフィシャルユニホームにも左袖にはAICHIの文字が揺れる。前半、相当押し込まれるも相手を見た上での正しい状況判断。ミスマッチを避けつつ、ギリギリのところでいなしていく。難しい場面は多々あったものの、何とか0-0で前半を終える。
ハーフタイムには後半のプランニングを説明。役割の明確化と攻撃的にシフトするチャンスについて共有理解を深めることに成功した。このハーフタイムは大きかった、と思う。無論、メンタル的にも押し込まれた前半をそれでも凌げたことに対する安堵感と、改めて仲間同志の信頼関係を確認できた。
今回の清水遠征は改めてマネージャーと控え選手の人間力が試される場面が多くあった。暑さの中で想定外のコンディション不良や怪我の回復が遅れた選手のフォローはすべてマネージャーが把握している。今回の遠征でも本当に完璧であった。遠征直前に1,2年生全員が4級審判を取得。少々の不安を抱えながらも二日目以降の副審はなんと1年マネージャーが全て務め上げた。引水タイムのスムーズなサポート、ビデオ撮影、荷物運搬、その他雑務という一言で片づけるには多すぎる役割をマネージャーに押し付けるのではなく、われ先にと動く控え選手たち。怪我でプレーを自重する部員も悔しさを心に押し込めて、全員で緊張感あるベンチワークをやり切っていた。私が言うのもなんだが、見事というしか無い。
後半に入り、徐々にアンガクの時間が増えていく。前半にも増して明確になった戦術と戦略は、勝利に向けた光になりつつあった。決定機を必ず生み出せると選手に話した後半も半分を過ぎたタイミング。期待に反して先にゴールネットを揺らしたのは東海大翔洋。中盤での攻守の打ち合いでボールをヒットできずスペースに流れる。嫌なカタチで相手スローインに。鍛えられたチームはこういったシーンでの判断が早い。サイドをシンプルに突破され、それまで幾度も相手の決定機を未然に潰していたDFラインが対応しきれない。相手FWが放ったシュートは素晴らしい角度で突き刺さってきた。0-1。苦しい時間帯の失点に顔をゆがめるもピッチ上から「ここから頑張ろう!」の声。そして気落ちしなかった選手の気持ちが実を結ぶ時が来る。後半24分。前半とは比べ物にならないほど支配率を上げた展開の中、アウトサイドから鋭く仕掛ける。一瞬、相手DFに隙が生まれたのかもしれない。相当積極的にプレスをかけた中からボールがこぼれてくる。最後に詰めたのははるか。同点。そして後半28分。攻撃の手を緩めない戦い方でCKを獲得。気持ちのこもったボールはアンガクの前に。一度はバーに阻まれたものの、相手のクリアにひるまず詰めたのはしおり。逆転。2-1。タイムアップ。昨年度のPK準優勝に続く、劇的な優勝。歓喜の涙と抱擁が精神的な充実を表していた。
表彰式で受け取った優勝トロフィーの大きさと重さに歓喜する。代わる代わるトロフィーを掲げ、記念撮影。過去の先輩たちがもう一歩のところで成し遂げられなかったことを成し遂げた。誇らしげで溢れんばかりの笑顔は達成感と比例するのだと改めて知った。
この経験を、残る夏の多くのゲームにつなげられるか。ここに新しいチャレンジが始まる。