決勝トーナメントに進出したとはいえ、一回戦で早々と姿を消すことになった総体県予選。勝ちきれなかった理由を真正面から受け止めてトレーニングに励んでいる。個々で取り組んでいることもあるがチーム全体としてのキーワードは“仕掛け”と“フィニッシュ”。不得手な部分に着手するのは苦しいものだ。まるで苦手なピーマンやニンジンを、鼻をつまんで口に放り込むようなもので、最初はなかなか美味しく感じられない。しかしその栄養を理解したり調理方法を工夫することで自然と食べられるようになったり、苦手だったことがウソみたいになることもある。今のところはまだまだ「美味しい!」とまではいかないまでも「…前よりは鼻をつままなくても食べられるようになったかな…」という感じか。とは言え、意識的に取り組むことでおのずと積極性も出てきた。得意なことを伸ばすのも大事だがプレー全体の質、アベレージを引き上げるのも重要である。「これぐらいは出来て当たり前だよね」という感覚が、持つべきプライドを再認識させるとも思う。というわけで、今月はトレーニングを通したチャレンジの多い一か月になった。
月末、ありえないオファー。なでしこリーグで現在3位、三重を拠点とする伊賀FCくノ一とのTM。同日のなでしこリーグawayに帯同していないトップチームメンバーとの一戦。自分たちがトレーニングしている内容をそのまま確認できるとはもちろん思わないが、なんといっても国内最高峰リーグ所属チームとの対戦。マイクロバスのハンドルを握る顧問の手もいつも以上に力が入るのは当然である。片道約2時間の移動で上野運動公園競技場の天然芝、これまた最高の環境で30分3本(3本目はくノ一U-15との対戦)を行った。
オール1タッチのポゼッションに始まり、ダイナミックなドリブル、そして私自身、女子サッカーでは体感したことないレベルのサイドチェンジに翻弄され、ドンピシャの1タッチシュートを決められた。シュートを打たれる瞬間に寄せることすら出来ないレベル。一本目0-7、二本目0-4。
楽しみにしていた最高レベルへのチャレンジ、アンガクは何もできずに散ったのか。いや、このまま終わる『顧問の独り言』ではない。少し丁寧に振り返ってみる。
相手FWへのクサビに対し、冷静な予測とこれまでの経験に基づいたインターセプトのチャレンジは何度か上手くいった。サイドの突破に対し的確な距離感でディレイを試みる、これは失敗もたくさんしたが成功したケースもあった。最終ラインでのビルドアップを見極め、一瞬の隙を突いて相手を慌てさせることも成功。ボールホルダーに対し圧力をかけると同時にラインを押し上げるオフサイドトラップは何度も成功した。こうやって振り返ると、個の力で完膚なきまでに圧倒されたが、力の上回る相手に対しグループで対応する、というこれまでの取り組みは、このレベルとの対戦であっても“全くやれないわけでなく、やれることはある”ということが分かった。ただ、これまで以上に高い集中力(集中なんて生易しい言葉ではなく、むしろ目が血走るほどの表情が必要かもしれない)を持続し、コミュニケーションやコーチングを絶やさず、戦う姿勢を一瞬たりとも失ってはいけないということも教えられた。
完璧なボールコントロール、素晴らしいパススピード、鮮やかなダイレクトプレーを披露してくれたくノ一のメンバーと、試合後わずかだが談笑する間があった。非常に爽やかで快活、こんな風にわがアンガクメンバーも人間的成長が出来れば、と思わせてくれる面々であった。昨年度、日体大に香織と練習参加させて頂いた際にいろいろと面倒を見ていただいた方もおり、偶然の再会を喜びつつ「本当は遠征メンバーに選ばれないと…」と悔しさを口にされる姿を惜しげもなく見せてくれた。この高いレベルでも更に日々成長を目指していることが本当に素晴らしく、心から応援したいと思わせてくれた。またある選手の父兄からは、この“独り言”を読んでますよと声を掛けられた。どうやら岐阜経済大学の高橋先生と旧知の仲らしく、その関係で知っていただけていたようだ。サッカーの世界に身を置くことで知り合い、繋がる。それぞれわずかな時間ではあったが、いろいろな意味で勇気づけられる瞬間でもあった。