チームとして今回が6度目の県決勝進出。対戦するはこれまで同様に聖カピタニオ女子。部員の顔ぶれは毎年変われど高みの険しさは変わらない。そして…アンガクの〝今回こそ〟という決意も不変。
6月3日、口論義運動公園。ここ数日、練習時間になると風に煽られる毎日だったが前日ほどの強さはない。ピッチ上でいつも通りのW-UPを終えようとした頃、控室の方から気迫のこもった声が聞こえてきた。間もなく、ロッソネロが姿を現わす。
スタンドにはこの日も多くの視線があった。この日の第1試合、三位決定戦でしのぎを削った豊川と愛知啓成のメンバー。あるいはそこにたどり着けなかったチームの高校生もいる。運営協力の南山高校・中学部員。近隣県の指導者の姿もあった。U15のサッカー少女もいるようだ。またカピタとアンガクのOGが並んで観戦する姿も。そして部員の友人、保護者、両校の教員。
緊張感が高まる中、定刻通りキックオフ。
前半、ファーストシュートはカピタ。しかし試合への入り方は決して悪くなかった。準決勝では開始数分、硬さが感じられたがこの日はアグレッシブな気持ちとアクションが一致していたように思う。何を狙うか、どれだけ走るか、次に何が起きそうか。そういった行動力と共通理解は試合ごとに深まり、この試合もまた、これまでの経験に新たな1試合を積み重ねようとしていたと思う。
シュートシーンは何度かあった。スタンドが沸くようなアンガクらしい持ち味を生かした攻撃も幾つか出来ていた。ただ、もう一歩のところでゴールネットに届かなかった。
前半23分。カピタは隙を逃さない。それまで十分ケア出来ていたシーンで寄せきれなかった。0-1。
1点ビハインド、点を取りに行かなくてはいけない。ハーフタイム、システムは変えずメンバーとポジションを変更。
中盤から攻撃の引き出しが増えてきた。ポジション変更が吉と出たか。受けたボールをさばくだけでなく、自分の力で運ぶことでスペースと受け手が動くための時間を生み出せたのが成長の証。
だが今度はカピタのトランジションー守から攻への切り替えーのギアが上がる。対応が苦しくなる。失点をしたくない気持ちからか、少しずつ守備組織が後傾になり始めた。
後半11分はフリーで放り込ませてしまった。ゴール前に人数はいたが放物線はその上を通過。落下点にいたのはカピタの選手だった。0-2。
後半13分。サイド深いところから逆サイドまで展開を許す。競りに行くもタイミングと落下点をわずかに見極めきれなかった。0-3。
後半16分。ボールサイドに守備意識が寄ったところで早いタイミングのクロス。全力でカバーに行くも間に合わず。フリーでミスショットするチームではない。0-4。
後半26分。ナツキが受けたファールからFK。リノのロングキックは一度跳ね返されるがミサトが頭でつなぎ、最後はレオナが技ありの一撃。1-4。
その後も追加点を目指してカピタニオゴールに向かい続けた。
そして、試合終了。6度目の挑戦が終わった。
試合を終え、ピッチ脇に集まり健闘を讃える握手はそれぞれと交わした…。しかしその後…決勝で負けて、慰めの言葉をかけなかったのは初めてだ。慰めの言葉は必要ないのではないか…慰めてはいけないんじゃないか…と直感的に思ったからだ。可能な限りの準備をし魂を込めて全力で戦ったのだ。出来なかったこと、やりきれなかったことと向き合うための涙であれば慰める必要などない。後半の3失点についてひとつずつ紐解く。対処できなかった理由は何か。そして失点を引きずらず自分と周囲を鼓舞するメンタリティーを手に入れようと。
どうしたら勝てるのか。
決勝の三日前、本校の体育祭があった。やはり盛り上がりの最高潮は部活動対抗リレー。女子サッカー部を代表して走ったのはたま&あみ&りか&れおなの韋駄天カルテット。前評判通りスタートから好位置につけた。3位から2位に上がり、陸上部と一騎打ち。そしてなんと…体育祭史上初、女子サッカー部が優勝した。全国常連、勝って当たり前の陸上部に対し、食らいついて〝何か〟が起きるのを辛抱して待った女子サッカー部。バトン渡しのアクシデントで前に出ることができたのは最善を尽くし好機を見逃さなかったから、といったらちと大袈裟か。
どうして勝てたのか。
ヒントはいろいろなところにあると思う。
ここから先、間髪入れずLIGA東海が開幕し県高校リーグも間もなく始まる。7月には今年度から夏の大会(仮称)もある。東海プリンセスの入れ替え戦日程も遅ればせながら決まった。皇后杯も楽しみ。そして、暑い夏を乗り切るとすぐに高校選手権…。
前を向いて、試行錯誤と前向きな挑戦をしていこう。