行きのマイクロバス車内で最終的な戦術確認。守備的視点と攻撃的視点。攻守ともに不可欠な主体的姿勢と攻撃的判断についても言及。これまでも何度かに分けて話してきた事柄をおさらいする。その話を踏まえ、各自がしばし考え込み、誰から…というわけではなく少しずつ周囲のメンバーと打ち合わせが始まる。いつも通りのよくある風景、ちょっと大人し目だが悪くない雰囲気。そんな中、少し時間が経った頃に聞こえてきた雑談。「…でもさー最初の決勝の…新人戦だっけ?あの時に比べたら、ずいぶんマシじゃね?あの時はマジで…ハンパなく緊張してたよね~…もう舞い上がっちゃってて(笑)…ホント、口から心臓が飛び出るかと思ったし」。昭和感満載の例えに笑いをこらえつつ、ふと思うのは経験を積み重ねることの大きな意義。メンバーは毎回異なるし、今回が初めてだという部員も多くいる。それでも…チームとしての経験値はゆっくりと、しかし確実に上がっている。4回目の決勝進出。対戦相手はいつもと同じ、聖カピタニオ女子。
会場の口論義運動公園に到着。芝の剥がれ具合に唖然とする。スタンドの少し上にある本部控室で多田先生と開口一番この環境困っちゃったね、と互いに苦笑い。そんな中、3位同士の熱戦が繰り広げられている。南山対同朋。どちらに転んでもおかしくない情熱溢れたシーソーゲームはゴールを背にしたスリップヘッドという一瞬の閃きが結果的に勝敗を分けることになった。1-0で同朋勝利。
準決勝までと同様、予定通りのウォーミングアップ。いつもと同じタイミングで最終的なコンディションをチェックし、スターティングを伝える。緊張感はあるもののむしろ気持ちの高まり、高揚感が心地よい。
ふと振り返るとスタンドには大勢の観客。チームとして来ていたのは本部役員の春日井商業、大一番の主審を買ってくれた永井先生率いる至学館、熱い戦いを終えたばかりの南山と同朋。チームとしてではなくとも個人的に観戦に来てくれた各校部員、先生方もいた。もちろん両校の保護者も大勢。懐かしい両校OGが仲良く立ち並ぶ姿も。まさにサッカーが結びつけた、互いを認め合う美しい友情である。本校教員も何とか試合開始に間に合ったようでホッと一息。
キックオフ直前、多くを語る必要は無し。手をつないで何度か深呼吸。そして改めて全員で円陣。公式戦での出番を作ることが困難なセカンドメンバーがこの日に至るまで奮闘してくれたおかげで対人ハードワークをトレーニングの要素に入れ込むことができた。〝最後までチーム全員で戦うぞ!〟という意識と決意がスターティングを後押しした。
前半、開始から中盤で激しいチェックの応酬。『失点したくない』というより、もっと直感的な感情とでも言うべきか…『目の前のシーン、瞬間に絶対勝つんだ』という意識を発揮したプレーを頻出させるアンガク。そんな中でもクレバーに対応し、時にはしなやかに、時には力強く応戦してくるカピタ。チャンピオンの底力を感じる時間でもあった。ただ、今回で4度目となる決勝対決…攻守両面で〝戦えている!〟という実感をこの水準で得たのは初めて。だからこそ前半27分に一瞬の隙を突かれたことは当然悔しい。しかし同時にカピタが見事だったというしか無く、アンガクの守備の仕方は個でもグループでもまだまだ改善策があるということだと思う。
独り言に説得力をもたせてみよう。決勝前半のスタッツを見てみる。スローイン数は両チーム合わせて37回(カピタ24回アンガク13回)。そのうちミドルサード(ピッチを敵陣自陣中央に三分割した場合の中央部分)のスローインが両チームとも一番多く合計18回だった(カピタ12回アンガク6回)。全体数の約49%が中盤で行われたことになる。これは〝中盤で激しいチェックの応酬〟があったことの一つの裏付けと言える。さらにスローイン成功率(スロワーからボールを受けた1人目ないし2人目まででボールを失っていない率)を見ると両チームともアタッキングサードやディフェンシブサードに比べてミドルサードにおける数値が最低であった(カピタ25%アンガク33%)。両チームが主導権を握るために、文字通り〝息つく間もなく〟いかに激しいチェックに向かったかが想像できると思う。
最少得失点差でハーフタイム。気温の上昇は免れているとはいえ…集中しているとはいえ…疲労の色は思いのほか濃い。無理もない。まだコンディションが回復していない中でプレーしている選手もいるのだ。しかし自分たちがカピタとしのぎを削っている、という充実感が次第に顔を上げさせる。背中を押す。
前半を振り返り、頭の中を整理。幾つかの成功を全員でもう一度思い出し、幾つかのミスについて全員で修正策を理解する。いざ後半へ。
後半、攻防の風向きが変わる。明らかにカピタの攻勢が強くなる。中盤の激しさは前半同様だが、ゴールに向かってくるスピードが一段と上がった。さらに厄介なのはボールの動きに連動して動く人数も増えたことであった。うまく掴まえきれないが当然アンガクも対応する。サイドバック含めたマッチアップは受けに回りながらも決して引けを取ってはいなかった。しかしそれでも徐々に押し込まれる。どうしてもリアクションが多くなり、ゲームテーマであった主体的姿勢が表現しにくい。ただ、そんな展開だからこそカウンター攻撃が大きな意味を持った。切れ味ある速攻はその都度スタンドから歓声と賞賛の拍手がわいた。象徴的なシーンは自陣、カピタのCKから。直線的にアンガクゴールに向かってきたボールを間一髪でGKがパンチングで逃れた直後、CBが展開→FWがキープでタメを作り→MFとダイレクト展開。その後、一気にドリブルでスピードを上げ最終ラインを突破し、絶妙なクロス。飛び込んだのは自陣ゴール前で体を張ってから100mをダイナミックに走り込んだMF。ネットを揺らすには至らなかったが見事なコンビネーション、見事なペネトレイトであった。
このシーンに限らず、絶大な効果があった幾つかの速攻が一つでも実っていたなら…この後の展開は少し違ったものになっていた、かもしれない…。
後半27分。奇しくも前半失点と同じ時間。変わらず激しい中盤の攻防。カピタが中央からスルーパス。パス自体は間違いなく良いものだったが、準備できていたDFラインにしてみればこれまで同様対応できる場面。ただ、想定外だったのはバウンドが少し変わったのか、受け手のカピタ選手がコントロールミスをしたこと。すかさず一気に寄せるアンガクDF。しかし運命のいたずらか、ボールはこの試合初めてマークが離れ完全にフリーになったカピタCFの足元へ。これまでピンチをしのいできたGKが目一杯の反応をするも一瞬間に合わず。2失点目。
ここまで3度の決勝では全て3点差の敗北。これまでも内容の成長は常にあった…攻守に渡っていい勝負をする時間やシーンは確かに増えていた…しかしそれらは(残念ながら)〝結果としての勝利〟とは異なる次元の話であったと思う(無論、過去は県ベスト8さえずっと叶わなかったチームなのに県決勝でそういう戦いを繰り広げるところにまで成長したのはOG全ての積み重ねだ。それらは全て私にとって最高の思い出であるし、今も思い返すと何だか誇らしい気持ちになる)。しかし今回のチャレンジは(今となっては)異なるニュアンスを持つ。アンガクが〝次の段階〟まで漕ぎつけようとしていると心から感じることができた。だからこそゴールネットを揺らすため、リスクを背負ってでも攻撃し続けなくてはならなかった。アディショナルを含めた終了間際3分間での連続失点は…だからこそ本当に悔しいし、もっと何かできたのではないかと今も毎日、考えを巡している。残酷だけれどこれもまた…チームとしての経験値、なのかもしれない。
試合終了。0-4。準優勝。誇るべき準優勝。
6/17。相変わらず何人かはどこかが傷んでいる。まぁ、この時期おそらくどのチームも似たようなものだろう(笑)。いつも通り、練習をする。まあまあ声も出ている。悪くない雰囲気。メニュー最後は久しぶりの12分間走。〝何か〟に一瞬怯えながらそれでも〝何か〟に挑む。励ましてくれる仲間がいるから出来ているのかもしれない。走り終えた瞬間、トップメンバーが前のめりに倒れこむ。全然立ち上がれない。でも力を出し切ることが出来るからこそアンガクのトップメンバーになれるんじゃないかなぁ(教育的に言えばそりゃ倒れないほうがいいけどね)。さて、自身で追い込む先に見えるものは、一体何だろう…。
6/18。総体東海地区大会、初日。カピタ対三重。会場は岐阜なのに今回も全員で応援。今日のキーワードは『昨日の敵は今日の友』。あ、敵なんて言ったらJFAに怒られるね。それにしても少し歌を覚えたはずなのにまた新曲が増えたみたい。コンニャロ、にくいぜカピタニオ。あー、タダさんってば、歌詞カード印刷しとくって言ってたのにサ、忘れてるんだ、ひでぇよ。でも仕方ないか、忙しいもんね。ま、でも試合内容でそんなちっぽけなことは全部吹っ飛んでしまった!あまりにもドラマチック!鳥肌立った!わざわざ行った甲斐があった!!でも名勝負は対戦相手の存在が大きいのです。タナカ先生見事でした…。常に良き対戦相手の存在が…観る人を惹きつけるのです…中学生が…愛知県でプレーするきっかけになるのです!
次は、ウチが行く。