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顧問の独り言 2023年6月 〜総体予選、一部始終〜、の巻。

目標設定をスパッと決められるほど単純な力関係は無いし、謙虚なのは美徳だけれどそれもあまりに度が過ぎると自信は無いのかと疑われる。そう言えば先日、TVのバラエティ番組で「〝どう見られるか〟と気にするよりも〝どうありたいか〟を大切にした方がいい」と、あのローランドさんが言っていた。ふむふむ、名言。群雄割拠の県高校サッカーにおいて、自分達がどうありたいか。これこそすなわち目標設定に直結する発想。

5月21日、準々決勝。U18リーグではアンガクが属する県1部よりもひとつ上のカテゴリ(東海)で成長する至学館が相手。新人戦で勝利しているとはいえ、苦戦は必至。ただ、目標達成にはこの段階での一戦を対戦相手がどこであれ、越えなければ何も始まらない。
ここに至るトレーニングは日に日に熱を帯びた。1週間前の豊川、そして平日に組んだ男子中学サッカー部とのトレマッチ2連敗は〝見失ってはいけない自分達らしさ〟を再認識するという点で、示唆に富んでいた。
気合十分、しかし最初に試合を動かしたのは前半8分の至学館。あっけなくPA侵入を許し、間髪入れずスーパーな一発を被弾。伏線は直前に私が出した指示。思わぬ方向に転がってしまったコーチングの結末を、しかし選手はグッとこらえた。落ち込むことなど一切無し。キャプテン中心に極めてポジティブに展開したことがその後のシャットアウトに繋がった。
1点ビハインドでハーフタイム。使った交代カードは一枚。後半、攻勢に出るも最後の最後で決め手を欠く、惜しい攻撃。飲水タイムも過ぎ、若干の焦りを感じつつ、それでも相手ゴールに迫る場面を積み重ねた。その思いが結実したのはアディショナルタイム表示が出されたのとほぼ同時。この時間帯になっても全くスピードの落ちないマリンの突破がPA内でのファールを誘った。歓喜つかの間、こんな場面のPKを喜んで蹴る選手は、そういない。僅かな逡巡ののちPKスポットにボールをセットしたのは…さすがキャプテン。主将イヨがきっちり沈めて、やっと同点。公式記録で+2分のタイミング。
溜飲を下げた私は正直、延長突入、場合によってはPK戦かな…とイメージした。だがピッチの選手は残りの時間でもう1点を取りにいった。結果、その決断が更にゲームを動かす。恐らくラストワンプレー、右サイドのクロスに交代出場のミツキがバランスを崩しながらも気迫のヘッド。あんなミツキ、見たことない。こんな逆転弾、ドラマチック過ぎる。震える魂、そしてタイムアップ。2対1、勝利。

5月28日、準決勝。新人戦の準決とこれまた同じ、聖カピタニオ。劣勢の時間増が予想できる力関係は受け止めつつも、流れを凌ぎ続けることで勝機は生み出せる。コレはロッソネロと戦い続けたアンガク的経験値に基づく信念と言ってもいい。守備は忙しくなるよね〜(笑、なんて軽いコトバの裏側で、積み重ねた練習とそれぞれの覚悟を確認する。
前半、2失点。ともにセットプレー。後半早々の失点もまた、セットプレー。相手がうわ手を行く部分をもちろん認めつつ、でも流れは何とか凌いでいるのに対処しきれないもどかしさ。トレーニングの質と意識づけの差。指導者の、指導レベルの違いがただただ悔しい。安城学園を選んだ選手のために私が成長しなくてはいけない。
後半さらに2発被弾し、トータルスコア0−5でホイッスル。
この笛は、いずれやってくる次の挑戦に向けた、スタートのホイッスル。

6月3日、決勝とシード順決定戦。前日、台風2号とあまりに強烈な線状降水帯によって豊橋豊川中心に大きな被害が。開始時刻を1時間遅らせた決勝はカピタニオが東海総体を決めた。そして今大会ラストマッチ、安城学園vs同朋。
キックオフ直後数分は少し落ち着かなかった。セーフティに入ろうとしたわけではないだろうが、らしくない守備から始めてしまった。とはいえ、時間の経過と共にすぐに修正。その後は落ち着きを取り戻したアンガク。48分、今大会初出場のチャンスが巡ってきた東三河のサワがマリンの落としを〝らしくない〟ゴールで先制。この瞬間だけは前夜の雨で家の前が川のようになってしまったことを少しは忘れられただろう!驚くサワ、歓喜のピッチ、そして…何故かざわめくベンチ笑。その20分後、ガヤのセットプレーから阿吽の呼吸でイヨに展開。直後狙いすましたクロスに合わせたのはユイ。教科書通りのヘディングはサイドネットを揺らし、流れを決定づける2点目になった。その後も追加点を狙うが同朋の踏ん張りも見事。最終盤には押し込まれる展開も無論あった。ただ、無失点で乗り越えたいという強い意思で見事にはねのけ、タイムアップ。最終戦を2−0の勝利で飾った。

群雄割拠の県高校サッカーにおいて、自分達がどうありたいか。
全国の扉を拓くチカラを身に付けていきたい。スキルフルで無くとも勢いだけで誤魔化したくない。
何事も最後までやり抜く、走り抜く。毎日積み上げている実感を、本番で証明したい。
新人戦はシード順決でPK負けして3位。総体は勝って3位。
間も無く、熱い夏がやってくる。夏を乗り越えたら、高校選手権がやってくる。やるしかない。